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暇だったので、電信柱に登りました。 登っても暇には変わらず、ついでに電線に絡み付いてみました。 しばらく電線に擬態すること15分。 ・・・・・・・。 ・・・・・・・。 ・・・・・・・。 スズメが私の背骨にピコっと乗りました。 私たちは互いに挨拶を交わしました。 「こんにちは。」「こんにちは。」 「あなたはどうして、電線になっているのですか?」 「暇な時の私の癖です。」 「では、いつも暇な時は電線になるんですか?」 「いえ、電線は今日が初めてです。」 「では、他に暇な時、貴方は何をするのですか?」 「コンクリートに化けたり、横断歩道の白線に化けたり、新幹線の窓に化けたり、小学生の貯金箱に化けたりします。」 「面白いのですか?」 「うーん・・・。面白い訳ではなく、時間つぶし的な・・・。みんなにとっての、日常生活みたいなものです。」 スズメは、何も言わず私の背中に糞をして、飛んでいきました。 そろそろ、お腹が減ったので、私は電線の擬態を止め、家に帰ることにしました。 家に帰っても、やはり暇だったので、爪を切ることにしました。 そういえば、昨日も一昨日も暇で爪を切ってしまっていたので、 「これは、大分、深爪になるなぁー」 と、思いながら肉を切らないように、慎重に慎重に爪を切りました。 切っていくうちに、私は次第に爪に集中しすぎていたため、「爪」に擬態していました。 いや、むしろ「爪」になっていました。 4畳半の小さな部屋に一枚の爪が、ヒラリとどこからとも無く舞い落ちてきました。 「擬態」ではなく「同化」した私は、その余りの安堵感に・・・・ 自分はもはや「爪」なんだと、思い始めていたのです。
by kingyonoosasimi
| 2006-01-28 21:30
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